マイデザイン思考ノート

ストレスの根本原因をデザイン思考で探求し、実践した私の記録

Tags: デザイン思考, ストレスマネジメント, 自己改善, 実践記録, 個人的課題

ストレスにデザイン思考を適用する

日々の生活や仕事の中で、多かれ少なかれストレスを感じることは避けがたい現実です。私自身も例外ではなく、特に複数のプロジェクトが同時進行する時期や、予期せぬ問題が発生した際に、漠然とした重圧や疲労感を覚えることが少なくありませんでした。これらの感覚が積み重なると、集中力の低下や判断力の鈍化を招き、自身のパフォーマンスや well-being に影響が出ることを懸念していました。

これまでも気分転換や休息といった対処療法は行ってきましたが、根本的な解決には至っていないと感じていました。そこで、業務で顧客の抱える課題解決にデザイン思考のアプローチを用いる中で培った視点を、自身のこの「ストレス」という個人的な課題に応用してみることにしました。「共感」「問題定義」「アイデア創出」「プロトタイプ」「テスト」という一連のプロセスを通じて、ストレスの正体を捉え、より効果的な対処法を見つけ出せるのではないかと考えたのです。

この記事では、私自身がストレスという個人的な課題に対し、デザイン思考の各フェーズをどのように適用し、どのような試行錯誤を経て、何を得たのか、その実践プロセスを記録として共有いたします。

課題の深掘り:ストレスの「共感」と「問題定義」

デザイン思考の最初のフェーズは「共感」です。これは通常、他者の視点に立ってニーズやペインポイントを理解することですが、自身の課題に応用する場合、自分自身の感情や状態に深く「共感」することから始めました。具体的には、どのような状況で、どのような感情や身体的反応としてストレスを感じるのか、意識的に観察し、記録することから始めました。

朝の満員電車、会議での予期せぬ質問、締め切り直前のタスク、自宅での些細な出来事など、ストレスを感じた具体的な場面とその時の心境や身体の感覚を、スマートフォンのメモ機能や簡単な日記アプリに記録しました。数週間続けるうちに、特定のパターンが見えてきました。例えば、予測不能な状況や、自分のコントロールが及ばない事柄に対して、特に強いストレスを感じやすい傾向があることに気づきました。また、休憩を取らずに長時間作業を続けると、些細なことでもイライラしやすくなることも明らかになりました。

次に「問題定義」のフェーズです。「共感」で得られた観察結果をもとに、解決すべき真の課題は何かを掘り下げました。「単にストレスをなくす」という漠然とした目標ではなく、より具体的で actionable な問いに落とし込むことを目指しました。記録を分析する中で見えてきたのは、「予測不能性への対処力の不足」や「心身の回復を意図的に行う習慣の欠如」といった論点でした。

これらの気づきから、私の解決すべき真の課題は「予測不能な状況に直面した際の精神的な構えを強化し、意図的な休息による心身の回復メカニズムを日常に取り入れること」であると定義しました。この定義により、漠然としたストレス軽減ではなく、具体的な行動目標が見えてきました。

解決策の模索:ストレス軽減の「アイデア創出」

明確になった課題定義に対し、次は多様な解決策を「アイデア創出」フェーズで考えました。ここでは、質より量を重視し、現実的なものから一見突飛に思えるものまで、様々なアイデアをリストアップしました。一人ブレインストーミングのような形式で、思いつく限りの方法を書き出しました。

例えば、「予測不能性への対処力強化」に対しては、 * 「ワーストケースシナリオを想定し、対応策を事前に考える」 * 「マインドフルネス瞑想で感情の波を受け流す練習をする」 * 「不測の事態を楽しむゲームとして捉える」 * 「信頼できる同僚や友人に相談するルーティンを作る」 * 「あえて計画を立てず、アドリブを楽しむ練習をする」 といったアイデアが出ました。

「意図的な休息と回復メカニズムの導入」に対しては、 * 「昼休みに15分散歩する」 * 「仕事の合間にストレッチを取り入れる」 * 「寝る前にジャーナリング(書く瞑想)をする」 * 「週末にデジタルデトックスの日を設ける」 * 「短時間でも好きな音楽を聴く時間を作る」 * 「自然の中で過ごす時間を意識的に増やす」 といったアイデアが生まれました。

これらのアイデアの中から、自身のライフスタイルや性格にフィットし、かつ実現可能性が高そうなものをいくつか絞り込みました。全く新しい習慣を一度に導入するのは難しいため、まずは小さく始められるもの、既存のルーティンに組み込みやすいものを優先的に選択しました。最終的に、「朝の始業前に5分間、その日のタスクと予期しうるリスクを棚卸しする」「午後の集中力が途切れたタイミングで簡単なストレッチか短時間の散歩を行う」「週末のどちらか半日はスマートフォンを触らない時間を設ける」の3つを試してみることにしました。

具体的な行動計画と試行:ストレス軽減策の「プロトタイプ」と「テスト」

絞り込んだアイデアを具体的な行動計画(プロトタイプ)に落とし込み、実際に試してみる「プロトタイプ」と「テスト」のフェーズに進みました。この段階では、計画通りに進まなくても良い、あくまで「試行」であると割り切り、気軽に始めることを心がけました。

  1. 朝のタスク・リスク棚卸し:

    • 計画: 毎朝始業前、PCを立ち上げてすぐにGoogle Keepに箇条書きで記入。
    • 試行: 最初の数日は習慣化を忘れがちでしたが、リマインダーを設定することで定着しました。予期せぬリスクを考えることは、漠然とした不安を具体的な課題として捉え直すのに役立ちました。ただし、時間がかかりすぎると別のプレッシャーになるため、5分以内と時間を区切る工夫が必要でした。
  2. 午後のストレッチ・散歩:

    • 計画: 15時頃、席を立ち簡単なストレッチを行うか、オフィス周辺を5〜10分散歩する。
    • 試行: ストレッチは席でも手軽にできましたが、散歩は天気や業務状況に左右されました。しかし、短い時間でも席を離れて体を動かすことは、気分転換になり午後の集中力維持に効果があることを実感しました。特に外に出て光を浴びることは、想像以上にリフレッシュ効果が高いと感じました。
  3. 週末のデジタルデトックス:

    • 計画: 土曜日か日曜日のどちらか半日(例えば午後)、意識的にスマートフォンやPCから離れる。
    • 試行: 最初はSNSやニュースが見られないことに落ち着きませんでしたが、代わりに読書をしたり、家族とゆっくり話したりする時間が増えました。デジタルデバイスから距離を置くことで、頭の中が整理され、週明けへの漠然とした焦燥感が軽減される感覚がありました。完全に半日は難しい日もありましたが、まずは3時間など短い時間から始めることで抵抗感が減りました。

これらの試行を通じて、それぞれの行動が自身のストレスレベルや気分にどのように影響するかを観察し、記録しました。うまくいかなかった点や、予想外の発見も多くありました。例えば、朝の棚卸しは「完璧にリスクを洗い出す」ことよりも「予測不能な事態が起こりうることを心構えしておく」ことに意義がある、といった気づきです。また、午後の散歩は単なる運動だけでなく、環境の変化が精神的なリフレッシュにつながることも分かりました。

結果と学び:実践を通じた洞察

3つのプロトタイプを数週間継続した結果、全てのストレスがなくなったわけではありませんが、漠然とした不安や、突発的な出来事に対する過剰な反応が以前より軽減されたことを実感しています。特に、朝の棚卸しは心の準備に、午後の休憩は集中力維持に、週末のデジタルデトックスは心身のリフレッシュに、それぞれ一定の効果が見られました。

このプロセスを通じて得られた大きな学びは、以下の2点です。

第一に、ストレスという曖昧な感情を、デザイン思考のフレームワークを用いて分解し、具体的な課題として定義することの有効性です。「なぜストレスを感じるのか」「どのような状況でそれが強まるのか」を掘り下げることで、単なる感情論ではなく、解決に向けた具体的な糸口を見つけることができました。

第二に、プロトタイプとしての小さな行動の試行錯誤の重要性です。完璧な解決策を一度に見つけようとするのではなく、実現可能性の高い小さなアイデアから試してみること。そして、その結果を観察し、次にどう活かすかを考える iterative な(反復的な)アプローチが、自身の課題解決においては非常に効果的でした。うまくいかなかった試みも、なぜうまくいかなかったのかを分析することで、次のアイデアに繋がる貴重な情報となります。

結論:個人的な課題解決におけるデザイン思考の価値

個人的な悩みや目標に対しデザイン思考を適用することは、非常に有効なアプローチであると改めて感じています。特に、ストレスのような複雑で個人的な課題に対して、共感を通じて現状を深く理解し、問題定義で解決すべき本質を見定め、多様なアイデアを試し、結果から学ぶというプロセスは、単なる精神論や根性論に依らない、地に足の着いた解決策を見出す手助けとなります。

デザイン思考は、ビジネスの場だけでなく、自身のキャリア、健康、人間関係、趣味など、様々な個人的な領域に応用可能です。もし、あなたが漠然とした悩みや達成したい目標を抱えているのであれば、ぜひ一度、デザイン思考のレンズを通してそれを眺めてみてはいかがでしょうか。きっと、新しい視点や、次に取るべき具体的な一歩が見えてくるはずです。この記録が、あなたの個人的なデザイン思考ジャーニーを始めるための一助となれば幸いです。