マイデザイン思考ノート

趣味探しと継続、デザイン思考で探求した私のプロセス

Tags: デザイン思考, 趣味探し, 継続, 個人的課題, 実践例, 自己分析

デザイン思考を個人的な課題に適用する試み

この「マイデザイン思考ノート」では、私自身の悩みや目標に対し、デザイン思考のアプローチを適用した実践例とその過程を記録しています。今回は、30代後半になり仕事に追われる日々の中で感じ始めた「個人的な充実感の希薄さ」という課題に向き合い、新しい趣味を見つけて継続することを目標に、デザイン思考の考え方をどのように活用したかをお話しします。

これまでの私は、新しい趣味を見つけようと思いつきで始めては、すぐに飽きてしまうことを繰り返していました。書店で見かけたガイド本や、SNSで話題の活動に手を出してみるものの、どれも長続きしませんでした。デザイン思考の「共感」や「問題定義」といったフェーズは、単に新しいアイデアを生み出すだけでなく、本当に解決すべき課題は何なのかを深く探るためのものだと理解し、これを自身の「趣味が続かない」という問題に応用できるのではないかと考えたのが出発点です。

課題の深掘り:なぜ趣味が続かないのか(共感・問題定義)

デザイン思考の最初のステップである「共感」は、他者の視点に立つことですが、今回の個人的な課題においては、自分自身への深い共感、つまり内省から始めました。なぜこれまでの趣味は続かなかったのか、何に価値を感じていたのか、あるいは感じられなかったのかを掘り下げました。

過去に熱中したことや、時間を忘れて没頭できた経験をリストアップし、それぞれの時の感情や状況を詳細に思い出そうと試みました。また、親しい友人や家族に「私がどんな時に楽しそうか」「どんなことに興味を持ちそうか」と尋ね、客観的な視点を取り入れました。

この内省と対話のプロセスを通じて、私が趣味に求めているのは単なる気晴らしや流行に乗ることではなく、「没頭できる時間」と「少しずつの成長を実感できること」であるという仮説が見えてきました。これまでの趣味は、多くの場合「消費」であり、自分から何かを生み出したり、スキルを習得したりする性質のものではなかったことに気づきました。

こうした洞察に基づき、解決すべき真の課題を次のように再定義しました。「仕事以外の時間を使い、没頭と自己成長を両立できる活動を見つけ、それを生活に定着させるための持続可能な仕組みを構築すること」です。単に「新しい趣味リスト」を作るのではなく、「継続できる状態」まで視野に入れることが重要だと認識しました。

解決策の模索:アイデアの発見と絞り込み(アイデア創出)

明確になった課題に対し、次は解決策、つまり具体的な活動のアイデアを可能な限り多く生み出すフェーズです。ここでは、個人でのブレインストーミングを行いました。

「没頭と自己成長」という基準を満たしそうな活動を、思いつくままにリストアップしました。例えば、プログラミング学習、外国語学習、楽器演奏、文章執筆、絵を描くこと、手芸、家庭菜園、写真、特定のスポーツの技術習得などです。過去に少しでも興味を持ったことや、友人から勧められたことも含め、質よりも量を重視してアイデアを膨らませました。

次に、これらのアイデアを「没頭できるか」「自己成長を実感できそうか」「現在の自分のリソース(時間、費用、場所など)で実現可能か」「継続できそうか」といった基準で評価し、絞り込みを行いました。特に、「継続できそうか」という観点では、無理なく日々の生活に取り込めるか、小さな成功体験を積み重ねられそうかなどを考慮しました。

その結果、初期投資や場所を選ばず始めやすい「オンラインでのプログラミング学習」と、以前から少し興味があり、植物の成長という目に見える変化がある「ベランダでのミニ家庭菜園」の二つが有力な候補として残りました。

具体的な行動計画と試行(プロトタイプ作成・テスト)

絞り込んだアイデアを実行に移すため、それぞれの「プロトタイプ」を作成しました。デザイン思考におけるプロトタイプは、完璧な完成品ではなく、アイデアの核となる部分を素早く形にし、試すためのものです。個人的な活動においては、これは具体的な行動計画と、それを実行してみる期間を設定することに当たります。

「オンラインプログラミング学習」のプロトタイプとして、無料の入門コースを利用し、平日の夜に30分、週末に1時間学習する、という計画を立て、1ヶ月間試行することにしました。使用する言語や教材も、手軽に始められるものを選びました。

「ベランダ家庭菜園」のプロトタイプとしては、園芸店でミニトマトとハーブの苗を一つずつ購入し、必要な最低限のプランターや土を用意しました。毎朝の水やりと、週に一度生育記録をつけることを習慣化する計画を立て、こちらも1ヶ月間試行しました。

試行期間中は、単に活動を行うだけでなく、その活動中に何を感じたか、計画通りに進んだか、予期せぬ出来事があったかなどを日々記録しました。プログラミング学習では、エラー解決に苦労する一方で、小さなコードが動いたときの喜びがありました。家庭菜園では、植物の成長に癒やされるものの、虫の発生や天候による影響など、管理の手間が想定以上にかかる場面もありました。

結果と学び:実践からの洞察(テスト)

1ヶ月の試行期間を経て、それぞれのプロトタイプから得られた結果と学びを評価しました。

ベランダ家庭菜園は、緑に触れる心地よさや収穫という小さな成功体験はありましたが、日々の細やかな手入れや想定外のトラブルへの対処に追われ、「没頭」というよりは「世話」の感覚が強くなりました。また、旅行などで家を空ける際の管理が難しく、継続性という点では課題が多いと感じました。当初求めていた「自己成長」も、園芸知識の習得にとどまり、自分が本当に求めていた種類のものではないと気づきました。

一方、オンラインプログラミング学習は、課題やエラーに直面することも多かったものの、それを乗り越えてコードが完成したときの達成感は大きく、新しいスキルを習得しているという「自己成長」を強く実感できました。時間を忘れて没頭できる瞬間もありました。継続するためには、一人で学習する孤独感をどう解消するか、目標をより細かく設定するといった工夫が必要だと感じましたが、活動そのものに対する興味や意欲は高いままでした。

このテストフェーズで得られた最も重要な学びは、単に「やるかやらないか」ではなく、「やってみてどう感じたか」「何が継続を阻害し、何が継続を後押しするか」を自身の感情や状況に照らして深く分析することの価値です。うまくいかなかったプロトタイプも、それは失敗ではなく、「自分には合わないアプローチだった」という貴重なデータとなり、次の改善に向けた示唆を与えてくれます。

結論:デザイン思考を個人的な課題解決に活かす

今回の趣味探しのプロセスを通じて、デザイン思考はビジネス上の課題解決だけでなく、個人の悩みや目標に対しても非常に有効なフレームワークであることを改めて実感しました。特に、最初の「共感」と「問題定義」で自分自身と深く向き合い、解決すべき真の課題を明確にすること、そして「プロトタイプ」と「テスト」を通じて小さな試みを繰り返し、実践から学びを得て改善していくサイクルが、表面的な解決策に飛びつくのではなく、自分にとって本当に意味のある、継続可能な道を見つけるために不可欠であると感じています。

最終的に、私はオンラインプログラミング学習を本格的に継続することを選びましたが、これも一度の成功で決まったわけではなく、テストから得られた学びをもとに、学習方法や目標設定を改善していく次のサイクルが始まります。完璧な解決策は存在しないかもしれませんが、デザイン思考のプロセスを通じて、試行錯誤を恐れず、現実に基づいた学びを積み重ねていくことが、個人的な課題を乗り越え、目標達成に近づくための確かな一歩となるはずです。

読者の皆様も、もし今何か個人的な悩みや目標をお持ちでしたら、ぜひデザイン思考の考え方を応用して、あなた自身の「実践と記録」を始めてみてはいかがでしょうか。