マイデザイン思考ノート

デザイン思考で新しい学習習慣を設計し実践した記録

Tags: デザイン思考, 自己啓発, 学習法, 習慣化, 実践記録

新しい学びへの挑戦と、立ち止まった壁

私自身の個人的な課題として、新しい分野の学習を習慣化し、効率的に知識やスキルを身につけることに関心がありました。特に、自身のキャリアを広げるために、これまで触れたことのない技術領域について深く学びたいと考えていましたが、書店で関連書籍を購入しても積読になる、オンライン講座を契約しても途中で視聴をやめてしまう、といった状態が続いていたのです。

漠然とした焦燥感はありましたが、何が原因で学習が継続できないのか、どうすれば効率よく学べるのか、具体的に理解できていませんでした。そこに、業務で関わる機会が増えてきたデザイン思考のアプローチを、この個人的な学習という課題に適用してみようと思いついたのです。理論だけでなく、実際に自分の手で試行錯誤のプロセスを経てみたいと考えました。

学習停滞の真の課題を深掘りする

デザイン思考の「共感」と「問題定義」のフェーズを、自身の学習課題に適用しました。まずは自己の内省から始め、過去に学習がうまくいった経験、そうでない経験を振り返りました。どのような状況で意欲が湧き、どのような状況で失速するのか、具体的な場面を思い出しながら書き出しました。

次に、学習に関心のある友人や同僚数名に、彼らの学習方法やモチベーション維持の秘訣、あるいは挫折経験について尋ねてみました。形式張ったインタビューではなく、喫茶店での気軽な対話形式です。彼らの話を聞く中で、自分だけが抱えている悩みではないこと、多くの人が時間確保やモチベーション維持に苦労していることを改めて認識しました。

これらの内省と対話を通じて見えてきたのは、私の学習が停滞する要因が単なる「時間がない」ことだけではない、という点でした。より本質的な課題は、以下の3点に集約されると感じました。

  1. 目標が曖昧で、学習の「Why」が腹落ちしていない: 何のために学ぶのか、学んだ先に何があるのかが明確でないため、短期的な困難に直面すると容易に諦めてしまう。
  2. 学習プロセスが受動的で、アウトプットが極端に少ない: 書籍や動画でのインプットに終始し、学んだことを自分の言葉で説明したり、実際に手を動かしたりする機会がないため、定着しないし飽きやすい。
  3. 学習環境が「孤独」である: 一人で黙々と学習するため、モチベーションの維持が難しく、疑問点を解消するのに時間がかかる。

当初考えていた「どうすれば学習時間を増やせるか」という表層的な課題ではなく、「学習の意味づけ」「能動的なプロセス設計」「環境づくり」といった、より根源的な課題が浮かび上がってきたのです。これが「問題定義」の重要なステップだと実感しました。

解決策の多様なアイデアを探る

定義した課題に対して、「アイデア創出」のフェーズに入りました。先ほどの3つの課題それぞれに対して、どのような解決策が考えられるか、ブレインストーミングを行いました。一人で行うこともあれば、課題感を共有できる友人とオンラインで短時間ブレインストーミングを行うこともありました。批判をせずに、思いつく限りのアイデアを出すことに集中しました。

例えば、「学習環境が孤独である」という課題に対しては、以下のようなアイデアが出ました。 * オンライン学習コミュニティに参加する * 勉強仲間を見つけて定期的に進捗を共有する * メンターを探す、質問できる環境を作る * コワーキングスペースやカフェで学習する * 学習内容についてSNSで発信する * 家族や友人に学習目標を宣言する

これらのアイデアの中から、自身の状況や実現可能性、期待される効果などを考慮して絞り込みを行いました。時間や費用の制約、そして何より「自分が試してみたい」と思えるかを基準に選びました。最終的に、以下の3つのアイデアを実践してみることに決めました。

  1. 「Why」を明確にするための学習ロードマップ作成: 最終的な目標から逆算し、どのようなスキルや知識が必要か、それをどう使うかを具体的にイメージできるロードマップを作成する。
  2. 「アウトプット前提」の学習サイクル導入: インプット(動画視聴など)の後に、必ず短時間でも学んだことをブログの下書きに書く、コードを一行でも書いてみる、などのアウトプットを取り入れる。
  3. オンライン学習コミュニティへの参加: 同じ分野を学ぶ人が集まるコミュニティに参加し、定期的に進捗報告や質問をする機会を作る。

プロトタイプとしての実践と試行錯誤

絞り込んだアイデアを、具体的な行動計画、つまり「プロトタイプ」として実行に移しました。まずは期間を1ヶ月と区切り、集中的にこれらのアプローチを試してみることにしました。

これらのプロトタイプを実行してみた結果、「テスト」のフェーズで見えてきたことがいくつかありました。

ロードマップは、学習全体の方向性が見える点で有効でした。しかし、詳細に作り込みすぎると途中で計画変更が難しくなるため、大まかな方向性を示すものとして捉えるのが良いと感じました。

アウトプット習慣は、予想以上に学習内容の定着に効果があることを実感しました。ただ、「何を書こう」「どんなコードを書こう」と悩む時間が発生し、15分という設定が短い日もありました。書き出すことを必須とせず、「学んだことについて考える時間」とする柔軟さも必要だと気づきました。

コミュニティ参加は、他の学習者の存在が刺激になり、一人ではないという感覚を得られたのが大きな収穫でした。積極的に質問したり交流したりするまでには至りませんでしたが、他の人の投稿を見るだけでもモチベーション維持につながることが分かりました。しかし、コミュニティによっては情報量が多すぎて疲弊することもあり、自分に合う場所選びや、情報の取捨選択のスキルも必要だと感じました。

実践から得られた結果と学び

1ヶ月間の試行を通じて、劇的に学習時間が爆発的に増えたわけではありません。しかし、以前のように数日学習から離れるとそのまま挫折してしまう、ということは減りました。特に、短い時間でもアウトプットを意識することと、コミュニティで緩やかに繋がることは、学習を継続するための心理的なハードルを下げる上で有効だと感じました。

デザイン思考のプロセスを個人的な課題に適用したことからは、いくつかの重要な学びがありました。

まず、漠然とした悩みを抱えている時には、「共感」と「問題定義」のフェーズが非常に有効であるということです。自分の内面や他者との対話を通じて、課題の根源がどこにあるのかを探るプロセスは、的外れな解決策に飛びつくことを防いでくれます。単に時間管理ツールを導入するのではなく、なぜ時間が確保できないのか、確保しても続かないのかを深く考えることの重要性を理解できました。

次に、「アイデア創出」においては、一人で抱え込まず、他者の視点を取り入れたり、既存の枠にとらわれずに多様な可能性を探ったりすることが、有効な解決策を見つける鍵となることです。そして、「プロトタイプ」として小さく実行し、「テスト」でその結果を検証するというサイクルを回すことが、理想論ではなく現実的な改善につながることを学びました。完璧な計画を立ててから実行するのではなく、まずは試してみて、そこから学ぶ姿勢が大切だと感じています。

デザイン思考はビジネスだけでなく、個人の成長や課題解決においても、非常に示唆に富むフレームワークであると再認識しました。ただし、ビジネスのように明確な顧客が存在するわけではないため、「共感」の対象は自分自身であったり、近しい関係者であったりします。また、結果の測定も、売上や顧客満足度のように数値化しやすいものばかりではありません。自身の内面の変化や、行動の定着度合いなど、主観的な要素も多く含まれる点を理解しておく必要があります。

個人的な課題解決におけるデザイン思考の価値

今回の新しい学習習慣の設計・実践を通じて、デザイン思考のプロセスは、個人的な悩みや目標に対しても有効なアプローチとなり得ることを確認できました。自身の状況を客観的に見つめ直し、課題の本質を見極め、多様な解決策を試し、そこから学びを得て次に繋げる。この一連のサイクルは、どのような個人的な挑戦においても、非常に役立つ考え方だと感じています。

もし、あなたが何か個人的な課題(例えば、新しい習慣を身につけたい、長年の悩みを解決したい、目標を達成したい)を抱えているのであれば、一度デザイン思考のレンズを通して、その課題を捉え直してみてはいかがでしょうか。まずは「共感」のフェーズで、なぜその課題があるのか、どのような状況なのかを深く掘り下げてみることから始めてみることをお勧めします。小さな一歩からでも、新たな発見があるかもしれません。