マイデザイン思考ノート

デザイン思考で個人的な苦手分野への挑戦をデザインし、実践した記録

Tags: デザイン思考, 自己成長, 課題解決, 実践記録

個人的な「苦手分野」への挑戦とデザイン思考

私たちの日常やキャリアにおいては、多かれ少なかれ「苦手分野」が存在するものです。それは特定のスキル、知識、あるいは人との関わり方など、様々でしょう。こうした苦手意識は、時に成長を妨げたり、新しい機会を逃す原因となったりします。私自身も、企画立案や分析業務に携わる中で、データ分析結果を非専門家にも分かりやすく伝えること、特に短時間で要点を捉えて話すことに苦手意識を持っていました。

データ分析自体は得意な方でしたが、その複雑な過程や結果を簡潔にまとめ、聴衆の関心を引きつけながら説明するとなると、どうにも構成が定まらず、時間がかかりすぎる、あるいは内容が冗長になる傾向がありました。会議での発表機会が増えるにつれて、この苦手意識を克服することが、自身の信頼性向上や、より効果的なコミュニケーションのために不可欠であると感じるようになりました。

そこで私は、仕事で学んだデザイン思考のフレームワークを、この個人的な苦手分野克服という課題に適用してみることにしました。デザイン思考は、ユーザー中心のアプローチで複雑な問題を解決するための思考法ですが、これを自己理解と自己改善に応用することで、より効果的に苦手分野への挑戦を進められるのではないかと考えたのです。

「苦手」の根源を探る:共感と問題定義フェーズの実践

まず、自身の「苦手」を深く理解することから始めました。デザイン思考における「共感」フェーズの個人版として、自身の内面に問いかけ、過去の経験を振り返る内省を行いました。

内省の結果、単に説明スキルがないだけでなく、「聴衆の反応への過度な不安」「完璧に伝えようとするあまり情報を詰め込みすぎる癖」「どう構成すれば伝わるかのパターン認識不足」といった、技術的な側面と心理的な側面の双方に課題があることが見えてきました。

次に、「問題定義」フェーズとして、この内省で得られた気づきを整理し、解決すべき真の課題を定義しました。私の場合は、「聴衆の理解度や関心に寄り添い、複雑なデータ分析結果を、指定された時間内に分かりやすく、かつ自信を持って伝える方法を習得する」という課題に落とし込みました。これは単なる「プレゼン上手になる」という漠然とした目標ではなく、「誰に(聴衆)、何を(複雑なデータ)、どう伝えるか(分かりやすく簡潔に、自信を持って)」を具体的に含んだ、より行動に繋がりやすい課題定義になったと感じています。

解決策のアイデア創出:アイデア創出フェーズの実践

定義された課題に対して、どのようにアプローチできるかを多角的に考えました。これはデザイン思考の「アイデア創出」フェーズに相当します。一人ブレインストーミングのような形で、可能な限りの解決策をリストアップしました。

これらのアイデアの中から、自身の状況(時間、予算、学習スタイル)に最もフィットし、かつ定義した課題解決に繋がりそうなものを絞り込みました。最終的に選んだのは、「データ分析結果の要約・伝達に焦点を当てたオンラインコースの受講」「信頼できる同僚に定期的に発表練習に付き合ってもらい、具体的なフィードバックをもらう機会の設定」「実際のデータを使って、特定の時間(例えば5分以内)で説明する練習を繰り返す」の3点でした。これらは単なる知識習得に留まらず、実践と他者からの視点を取り入れることを重視した組み合わせです。

具体的な行動と試行:プロトタイプ作成とテストフェーズの実践

絞り込んだアイデアを基に、具体的な行動計画(プロトタイプ)を作成しました。これは「プロトタイプ作成」フェーズです。例えば、

そして、この計画を実行に移しました。「テスト」フェーズの開始です。実際にやってみると、様々な試行錯誤がありました。

オンラインコースは非常に体系的で学びが多かった一方、仕事が忙しい週はどうしても進捗が遅れてしまうことがありました。計画通りに進まない現実に直面した際に、自分を責めるのではなく、「なぜ計画通りに進まなかったのか」「どうすればより現実的な計画にできるか」を考えるようにしました。また、同僚からのフィードバックは非常に有益でした。「〇〇の部分は専門用語が多くて分かりにくい」「結論が最初に欲しい」など、自分では気づけない具体的な改善点が明確になりました。一方、毎週時間を確保してもらうのは同僚にも負担がかかるため、事前に資料を共有しておく、質問内容を整理しておくなどの工夫が必要だと気づきました。自宅での練習では、録音を聞き返すのが億劫に感じる日もありましたが、自分の話し方の癖(語尾が不明瞭になる、沈黙が多くなるなど)を客観的に把握する上では欠かせないプロセスでした。

このように、プロトタイプである行動計画を実行し、そこで得られた結果や課題を分析し、必要に応じて計画を修正しながら、実践を継続しました。うまくいかないことの方が多かったかもしれませんが、それぞれの試行から何らかの学びを得ることを意識しました。

実践からの結果と学び

約3ヶ月間、このデザイン思考を応用した苦手分野克服のプロセスを実践しました。結果として、データ分析結果を説明する際の構成を事前にしっかりと組み立てられるようになり、話す時間も以前より正確に予測できるようになりました。また、同僚からのフィードバックを通じて、聴衆の視点を意識する習慣がつき、伝え方の表現も改善されました。完全に苦手意識がなくなったわけではありませんが、以前のような強い抵抗感や不安は軽減され、建設的に取り組めるようになりました。

このプロセスを通じて得られた最も大きな学びは、個人的な課題であっても、デザイン思考のフレームワークが非常に有効であるということです。特に、自身の「苦手」や「目標」を深く掘り下げて真の課題を定義すること、そして多様なアプローチを検討し、小さなプロトタイプを作って試行錯誤することの重要性を改めて認識しました。単に目標を設定して努力するだけでなく、プロセス自体をデザインし、柔軟に修正していく視点が、継続的な改善には不可欠であると感じています。また、他者からの客観的なフィードバックを取り入れることの価値も大きかった点です。

一方で、個人的な課題への適用においては、プロセスの厳密性よりも柔軟性が求められること、そして自分自身のモチベーション維持が最大の課題となることも実感しました。デザイン思考のフレームワークはあくまでツールであり、それをいかに自身の状況に合わせて使いこなすかが鍵となります。

結論:個人的な課題解決にデザイン思考を

今回の私の経験は、データ分析結果の伝達という特定の苦手分野に関するものですが、このプロセスは、キャリアアップ、健康習慣の改善、趣味の継続など、様々な個人的な悩みや目標にも応用可能であると確信しています。

自身の内面や周囲との関係性を「ユーザー」と捉え、共感を通じて課題を深く理解し、創造的に解決策を考え、小さく試して学びを得る。このデザイン思考のアプローチは、私たちが自己を理解し、より良い未来をデザインするための強力な手法となり得ます。もしあなたが今、何か達成したい目標や克服したい苦手分野を持っているのであれば、一度立ち止まり、デザイン思考のレンズを通して自身の状況を眺めてみることから始めてはいかがでしょうか。自身の課題解決のプロセスそのものをデザインすることから、新たな一歩が踏み出せるかもしれません。