マイデザイン思考ノート

情報過多時代のデジタルデトックス、デザイン思考で取り組んだ私の実践記録

Tags: デジタルデトックス, デザイン思考, 自己管理, 習慣改善, 情報整理

情報過多と向き合うためのデザイン思考アプローチ

現代社会において、スマートフォンやPCを通じて膨大な情報が絶えず流れ込んできます。仕事の情報、ニュース、SNSの更新、エンターテイメントなど、その種類は多岐にわたり、多くの方が情報過多による疲労感や集中力の低下を経験しているのではないでしょうか。私も例外ではなく、特に在宅勤務が増えてからは、仕事とプライベートの境目が曖昧になり、常に何らかのデジタルデバイスに触れている状態が続いていました。

この状況が続くと、本来集中すべき業務に力が注げなかったり、せっかくの休息時間がデジタルデバイスの操作に費やされたりするようになりました。漠然とした「デジタル疲れ」を感じつつも、どのように改善すれば良いのか具体的な行動に移せずにいました。そこで、仕事でデザイン思考のフレームワークに触れる機会があった経験から、「これは個人の悩みにも応用できるのではないか」と考え、自身の情報過多という課題に対してデザイン思考のアプローチを試みることにしました。単なる精神論や一時的な対策ではなく、課題の本質を捉え、持続可能な解決策を見出すための体系的なプロセスとして、デザイン思考が有効であると考えたのです。

課題の深掘り:共感と問題定義の実践

デザイン思考の最初のステップである「共感」は、他者だけでなく自身の内面に対しても深く行うことが可能です。私の場合は、まず自身の「情報過多による困りごと」について、意識的に内省する時間を設けました。具体的には、ジャーナリングを通じて、どのような時に情報過多を感じるのか、その時の感情や思考はどうなっているのかを記録しました。例えば、「朝起きてすぐにスマホをチェックしてしまう」「仕事中に通知が気になり集中が途切れる」「SNSを見始めるとあっという間に時間が過ぎる」「夜遅くまで情報を追いかけ、睡眠の質が低下する」といった具体的な行動やそれに伴う感情を書き出しました。

次に、「問題定義」のフェーズです。書き出した内省の記録をもとに、表面的な問題(例: スマートフォンを見すぎる)のさらに奥にある、解決すべき真の課題は何かを掘り下げました。自分にとって情報とは何か、デジタルデバイスはどのような役割を果たしているのかを問い直し、「価値ある情報に効率的にアクセスしつつ、不要な情報ノイズを排除し、集中力と精神的なゆとりを確保すること」が本質的な課題であると定義しました。単にデジタルから離れるのではなく、より健康的で生産的なデジタルとの付き合い方を見つけることが目標となりました。この段階で、「無意識な情報摂取行動を意識的な行動に変える」「情報源を精査し、質を高める」「情報収集とアウトプットのバランスを改善する」といった具体的な課題の方向性が見えてきました。

解決策の模索:アイデア創出の実践

定義した課題に対し、次に「アイデア創出」のフェーズに移りました。ここでは、どのような方法で課題を解決できるか、一人ブレインストーミングを行いました。実現可能かどうかは一旦脇に置き、自由な発想で考えうる限りのアイデアをリストアップしました。例えば、「特定の時間帯はスマホの電源を切る」「通知をすべてオフにする」「不要なアプリを削除する」「デジタルデトックスデーを設ける」「物理的な書籍を読む時間を増やす」「情報収集に特化したツールを使う」「作業中は集中できる環境を作る」など、様々なレベルのアイデアが出揃いました。

次に、これらのアイデアを「実現可能性」「自分へのフィット感」「期待される効果」といった基準で評価し、絞り込みを行いました。あまりにも極端な方法は継続が難しいと考え、まずは小さな習慣の変化から試せるアイデアを優先しました。最終的に、「夜間のスマートフォンの使用時間を制限する」「日中の不要な通知をオフにする」「情報収集の方法を見直す(例:SNSでの情報収集を減らし、信頼できる情報源からのインプットを増やす)」といった、比較的取り組みやすい複数のアイデアを選定しました。

具体的な行動計画と試行:プロトタイプとテストの実践

絞り込んだアイデアを基に、「プロトタイプ」を作成し、実際に「テスト」を行いました。デザイン思考におけるプロトタイプは、必ずしも物理的な試作品である必要はありません。ここでは、選定したアイデアを具体的な行動計画として設計し、実行に移すことを指します。

私の最初のプロトタイプは、「平日は夜9時以降スマートフォンを機内モードにする」というものでした。これを1週間実行することを計画し、同時に睡眠時間、翌朝の目覚めの感覚、夜間の行動の変化などを簡単に記録することにしました。

最初の数日は、つい手に取ってしまったり、機内モードにするのを忘れてしまったりという失敗がありました。これは計画通りに進まない「テスト」の結果であり、それ自体が重要なフィードバックです。なぜうまくいかなかったのかを内省し、対策を考えました(例: 寝室にスマホを持ち込まない、リマインダーを設定するなど)。

1週間試した結果、夜間のスマホ利用は確かに減り、就寝前のリラックス時間が増えました。しかし、仕事の連絡が入る可能性があるため、機内モードでは困る場面があること、また習慣化にはまだ時間がかかることが課題として見えてきました。

この結果を受け、プロトタイプを改善しました。「機内モード」ではなく、「特定のアプリの通知のみをオフにする」「スクリーンタイム機能で利用時間を制限する」といった、より柔軟な対策にシフトしました。このように、一度のテストで完璧な答えが出なくても、結果から学び、改善を重ねていくプロセスこそがデザイン思考の要だと感じました。

結果と学び:実践を通じた考察

一連のデザイン思考プロセスを通じて、私の情報過多という課題は完全に解消されたわけではありませんが、大きな変化をもたらしました。最も顕著なのは、無意識にデジタルデバイスに触れる時間が減り、意識的に情報を選び取る習慣がつき始めたことです。これにより、以前よりも集中力が持続するようになり、限られた時間で質の高い情報にアクセスできるようになりました。また、夜間のデジタルデトックスは睡眠の質の向上にもつながり、心身の疲労感が軽減されたことを実感しています。

この実践から得られた学びは多岐にわたります。まず、個人的な悩みであっても、ビジネス課題と同様に客観的なプロセスを通じて分解し、解決策を段階的に試していくことの有効性です。漠然とした不安や課題も、デザイン思考のフレームワークを通すことで、具体的な行動に落とし込むことができると感じました。

また、一度の試みで成功しなくても、それは失敗ではなく、改善のための貴重なフィードバックであるという考え方が身につきました。うまくいかない原因を分析し、柔軟に計画を修正していくことの重要性を痛感しました。

一方で、個人的な習慣を変えることの難しさも改めて認識しました。特に、依存性の高いデジタルデバイスとの付き合い方を変えるには、継続的な意識と工夫が必要です。デザイン思考は強力なツールですが、それを活用する自身の意志と行動力が伴って初めて効果を発揮すると言えるでしょう。

結論:個人の課題解決におけるデザイン思考の可能性

今回の情報過多への取り組みを通じて、デザイン思考はビジネスシーンだけでなく、私たち個人のキャリア、健康、習慣といった身近な課題に対しても非常に有効なアプローチであることを実感しました。自身の内面と向き合い(共感)、真に解決すべき課題を明確にし(問題定義)、多様な選択肢からアイデアを生み出し(アイデア創出)、小さく試して改善を繰り返す(プロトタイプとテスト)という一連のプロセスは、個人のQOL(Quality of Life)向上に貢献する可能性を秘めていると考えています。

もしあなたが、仕事やプライベートで何か漠然とした悩みや達成したい目標を抱えているのであれば、一度デザイン思考の考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。大きな一歩を踏み出す必要はありません。まずは、ご自身の課題を客観的に見つめ、小さなプロトタイプを設計し、試してみることから始めてみるのも良いかもしれません。この記録が、読者の皆様自身の「マイデザイン思考」を始めるきっかけとなれば幸いです。