マイデザイン思考ノート

デザイン思考で自己肯定感を向上させた私の実践記録

Tags: デザイン思考, 自己改善, 内省, 習慣化, メンタルヘルス

はじめに:内面的な課題へのデザイン思考の応用

日々の生活や仕事において、「これで良いのだろうか」「自分にはもっとできるはずなのに」といった漠然とした不安や不満を感じることがありました。特に、新しい挑戦を前にした時の「どうせうまくいかない」という自己否定的な考えや、他者からの評価を過剰に気にしてしまう傾向が顕著であると自覚していました。これは、いわゆる自己肯定感の低さから来るものだと考えられます。

仕事でデザイン思考を学ぶ機会があり、ユーザーのニーズを深く理解し、課題を定義し、創造的な解決策を見つけ出すプロセスが非常に有効であると感じていました。そこで、このデザイン思考のフレームワークを、仕事のプロジェクトではなく、自分自身の内面的な課題である「自己肯定感の向上」に応用してみることにしました。個人的な問題に対して、デザイン思考のステップを踏むことで、客観的に状況を捉え、具体的な行動計画を立てられるのではないか、という期待がありました。

課題の深掘り:自己肯定感の低さの根源を探る(共感・問題定義)

デザイン思考の最初のステップである「共感」は、通常はユーザーへのインタビューなどを通じて行われます。今回は自分自身が対象であるため、徹底的な「内省」を共感フェーズと位置づけました。

具体的には、自己肯定感が低いと感じる瞬間や状況を、できるだけ詳細に記録することから始めました。どのような時に、どのような感情や思考が湧き上がるのか。過去のどのような経験が、現在の自己評価に影響を与えているのか。これらの内省には、ジャーナリング(思考を書き出すこと)やマインドマップが有効でした。

次に、「問題定義」です。内省を通じて集めた情報から、自己肯定感の低さが具体的にどのような問題を引き起こしているのかを特定します。私の場合は、以下のような具体的な行動や思考パターンが浮かび上がりました。

これらの根底にある真の課題は何かを掘り下げた結果、「失敗への過度な恐れから、本来持っている能力や可能性を発揮する機会を自ら制限していること」が、解決すべき問題であると定義しました。自己肯定感そのものを直接的に高めるというよりは、「失敗を恐れずに行動できる自分になること」が、結果的に自己肯定感を向上させるのではないかと考えたのです。

解決策の模索:行動を後押しするアイデアを考える(アイデア創出)

定義した課題「失敗への過度な恐れから行動が制限されていること」に対して、どのような解決策があるかを考えました。この「アイデア創出」フェーズでも、一人ブレインストーミングを行いました。制限を設けず、思いつく限りのアイデアを書き出しました。

これらのアイデアの中から、現実的に実行可能で、私自身の課題にフィットしそうなものを絞り込みました。最終的に、以下の3つのアイデアを実践することにしました。

  1. スモールステップでの挑戦: 新しいことや苦手なことでも、成功・失敗に関わらず「まずは小さな一歩を踏み出す」ことを意識する。
  2. ネガティブ思考のログと転換: ネガティブな考えが浮かんだら、その思考と状況を記録し、別の視点(より客観的、肯定的、または学びとして捉える視点)で捉え直す練習をする。
  3. 「できたこと」ジャーナル: 毎日の終わりに、その日できたことや良かった点を3つ以上書き出す習慣をつける。

これらのアイデアは、どれも大掛かりな準備が不要で、日常生活の中で実践できると考えました。

具体的な行動と試行:プロトタイプとしての実践(プロトタイプ作成・テスト)

絞り込んだアイデアを具体的な「プロトタイプ」として、実際に日常生活の中で試してみました。期間を1ヶ月と設定し、それぞれの行動を意識的に実行しました。

  1. スモールステップでの挑戦:
    • 例:職場でいつもは躊躇していた会議での発言を、まずは質問から始めてみる。趣味のブログ更新で、完璧な記事を目指すのではなく、まずは「公開可能なレベル」で記事を書き上げてみる。
    • 結果:大きな成果に繋がることもあれば、想定通りにいかないこともありました。しかし、「行動を起こせた」という事実そのものが、以前よりも自己評価を下げることなく受け入れられるようになってきていると感じました。計画通りに進まない時も、「なぜうまくいかなかったのか」を冷静に分析する視点が養われました。
  2. ネガティブ思考のログと転換:
    • 例:「この企画書は完璧じゃないから提出できない」と考えた際、「完璧じゃないとは具体的にどういうことか」「提出しないことで失う機会は何か」「提出して得られる学びは何か」といった問いを立て、思考を書き出しました。
    • 結果:ネガティブな思考パターンそのものを完全に消すことはできませんでしたが、「あ、今ネガティブに考えているな」と気づける回数が増えました。そして、別の視点から考え直すことで、感情に飲み込まれる前に冷静さを取り戻せるようになってきました。思考を客観視する練習になったと感じています。
  3. 「できたこと」ジャーナル:
    • 例:その日達成したタスク、誰かの役に立てたこと、新しい学び、あるいは単に「今日は良い天気だった」「美味しいコーヒーを飲めた」といった小さなポジティブな出来事を記録しました。
    • 結果:最初は「何もできなかった日だ」と感じても、意識して探すと必ず何か「できたこと」が見つかることに気づきました。日々の小さな成功やポジティブな側面に目を向ける習慣ができたことで、全体的な自己肯定感が少しずつ向上しているように感じられました。特に、仕事で失敗した日でも、仕事以外の「できたこと」を記録することで、一日全体の自己評価が極端に下がることを防ぐ効果がありました。

結果と学び:デザイン思考の有効性と限界

1ヶ月間の実践を通じて、劇的な変化があったわけではありませんが、確かに自己肯定感に関わる課題への向き合い方が変わったと実感しています。「失敗への過度な恐れ」が完全になくなったわけではありませんが、恐れを感じながらも「まずはやってみよう」と思える機会が増え、行動を起こせるようになりました。

デザイン思考のプロセスを個人的な課題に適用することの有効性は、以下の点にあると学びました。

一方で、デザイン思考はあくまでフレームワークであり、実践には自身の継続的な努力と内省が不可欠であることも再認識しました。特に、内面的な課題は外部要因よりも複雑で、短期間での明確な成果が見えにくいという特性があります。また、共感フェーズでの内省は、自身の感情や思考と深く向き合うため、時に精神的な負担を伴う可能性もあります。

結論:個人的な成長へのデザイン思考の示唆

本記事では、私自身の自己肯定感向上という内面的な課題に対し、デザイン思考のフレームワークを応用した実践とその記録を共有しました。共感・問題定義フェーズで課題の根源を明確にし、アイデア創出フェーズで具体的な行動アイデアを考案し、プロトタイプ・テストフェーズでそれらを実践し、結果と学びを振り返るというプロセスは、個人的な課題解決においても有効なアプローチであると実感しています。

もしあなたが、キャリアや仕事の課題だけでなく、趣味、健康、人間関係、あるいは今回のように内面的な成長といった個人的な悩みや目標に対して、どのように取り組めば良いか模索しているならば、デザイン思考のフレームワークを一つのツールとして検討してみる価値はあるかもしれません。まずは、自身の悩みや目標をじっくりと内省することから始めてみてはいかがでしょうか。そして、解決すべき真の課題を定義し、小さくても具体的な一歩を踏み出すプロトタイプを設計し、実践してみることです。その試行錯誤の過程そのものが、あなたの成長に繋がるはずです。