マイデザイン思考ノート

デザイン思考を応用した、先延ばし癖改善の実践と記録

Tags: デザイン思考, 習慣改善, 先延ばし, 自己啓発, 実践例

マイデザイン思考ノートをご覧いただきありがとうございます。

このブログでは、私自身の悩みや目標に対し、デザイン思考をどのように適用し、試行錯誤しているかの記録を共有しています。今回は、長年私を悩ませてきた「先延ばし癖」にデザイン思考のアプローチで向き合った実践例についてお話しいたします。

仕事においては計画的にタスクをこなすよう努めているものの、プライベートなことや、期限が緩やかなタスク、あるいは「いつかやろう」と思っている重要だが緊急でないことについて、私は顕著な先延ばし癖を持っていました。この癖は、締め切り直前の焦りを生み、時には自己嫌悪に陥る原因ともなっていました。デザイン思考を仕事で知るにつれ、この思考法は単なるビジネスフレームワークではなく、人間中心のアプローチであるため、自分自身の内面的な課題解決にも応用できるのではないかと考えるようになりました。

課題の深掘り:なぜ私は先延ばしをするのか(共感・問題定義フェーズの実践)

デザイン思考の最初のステップである「共感」は、他者の立場や感情を理解することに焦点を当てますが、この個人的な課題においては「自分自身への深い共感と観察」として捉えました。なぜ私は先延ばしをするのだろうか、という問いを立て、自分の行動や感情を注意深く観察する期間を設けました。

具体的には、タスクを先延ばししたくなる瞬間に立ち止まり、その時の自分の感情(面倒くさい、気が進まない、完璧にできる自信がない、何から手をつければ良いかわからないなど)、タスクの内容、置かれている状況(時間帯、場所、周囲の環境)などをメモに取りました。一種の「自己エスノグラフィ」のような試みです。

さらに、より客観的な視点を得るため、信頼できる友人や家族に「私の先延ばし癖について、外から見てどう感じるか、どんな時にそう思うか」を尋ねてみました。彼らの視点からは、「いつも大変そうに見える」「直前になって焦っている」「もう少し早めに取りかかれば良いのにと思う」といった率直な意見を得ることができました。

これらの自己観察と他者からのフィードバックを通じて、私の先延ばし癖は単なる「怠惰」からくるものではなく、以下のような複数の要因が絡み合っていることが見えてきました。

これらの洞察を踏まえ、解決すべき真の課題を以下のように定義しました。

「タスクの着手と継続を阻む心理的・物理的障壁を特定し、それらを乗り越えるための行動様式をデザインする」

これは、「先延ばしをなくす」という漠然とした目標よりも、より具体的で、デザイン思考でアプローチ可能な課題設定であると感じました。

解決策の模索(アイデア創出フェーズの実践)

定義した課題に対し、どのようにアプローチできるかをブレインストーミングしました。ここでは、一人ブレインストーミングの要領で、どんなに突飛に思えるアイデアでも書き出すことから始めました。

「タスクの全体像が掴めない」という課題に対しては、「タスクを最小単位に分解する」「まずは5分だけやってみる(最初の一歩を極小化する)」「タスク完了までのステップを可視化する」。 「完璧主義の罠」に対しては、「最初の成果は完璧でなくて良いというマイルールを設定する」「とにかく形にすることに集中する」。 「モチベーション維持困難」に対しては、「タスク完了ごとに小さなご褒美を設定する」「誰かに進捗を報告する仕組みを作る」。 「集中を阻害する要因」に対しては、「スマホを別の部屋に置く」「特定の時間帯は通知を切る」「作業場所を変える」。

これらのアイデアは、既存のタスク管理術や自己啓発書で見かけるものも含まれていましたが、デザイン思考のフレームワークに乗せることで、「何のためにそれを行うのか(定義した課題への対応)」が明確になり、より実践的なアイデアとして捉え直すことができました。

次に、これらのアイデアの中から、私自身の状況や性格に合いそうで、かつ試しやすいものをいくつか絞り込みました。具体的には、「最初の一歩の極小化」「ポモドーロテクニック(短時間集中と休憩の繰り返し)」「タスクの可視化と分解」の3つを組み合わせて試してみることにしました。これらは、大きなタスクへの心理的ハードルを下げ、集中力を維持し、進捗を実感しやすいと考えたためです。

具体的な行動計画と試行(プロトタイプ作成・テストフェーズの実践)

絞り込んだアイデアを元に、具体的な行動計画(プロトタイプ)を設計しました。

  1. タスクの分解と可視化: 取りかかるべき大きなタスクを、5分〜15分程度で完了できる小さなステップに分解し、ToDoリストアプリや紙に書き出す。
  2. 最初の一歩の極小化: 分解したタスクの中から、最も手軽に始められる「最初の一歩」を特定し、「まずはこれだけを5分だけやる」と心に決める。
  3. ポモドーロテクニックの導入: 実際にタスクに取りかかったら、タイマーを使って25分集中し、5分休憩するサイクルを繰り返す。
  4. 進捗の記録: 完了したタスクにチェックを入れ、その日の作業時間を記録する。

このプロトタイプを、1ヶ月間、特に先延ばししがちな個人的なタスク(ブログ執筆、読書、自己学習など)に対して試してみました。

試行錯誤の過程では、計画通りに進まない日も多くありました。例えば、

これらの課題に直面するたびに、私はプロトタイプを修正しました。例えば、スマホを作業場所から遠ざける、分解するタスクの粒度をさらに細かくする、「記録をつける」という行為自体をプロトコルに組み込む、などです。これは、デザイン思考の「テスト」フェーズで見つかった課題を元に「プロトタイプ」を改善していくプロセスそのものでした。うまくいかなかった原因を「失敗」として捉えるのではなく、「改善のための情報」として捉え直すことができたのは、デザイン思考のアプローチを取ったからこそだと思います。

結果と学び

1ヶ月間の試行を通じて、私の先延ばし癖が劇的に解消されたわけではありません。しかし、以前よりもタスクに着手する際の心理的な抵抗が明らかに軽減されたことを実感しています。特に、「最初の一歩を極小化する」というアプローチは非常に効果的でした。完璧を目指さず、まずはごく小さな一歩を踏み出すことの重要性を体感しました。

また、タスクを分解し可視化することで、全体の進捗が把握しやすくなり、「途方に暮れる感覚」が減りました。ポモドーロテクニックは、特に集中力が途切れやすい午後の時間帯に有効でした。

この実践を通じて得られた個人的な学びは、以下の通りです。

デザイン思考を個人的な課題解決に適用することの有効性を感じましたが、同時に限界も感じました。自分自身が「ユーザー」であり「デザイナー」であるため、どうしても主観が入ってしまい、客観的な評価が難しい場面もありました。また、人間の習慣や感情は外部のユーザー行動よりも複雑で予測困難な側面があります。しかし、フレームワークがあることで、感情的な自己否定に陥るのではなく、理性的に課題と向き合い、試行錯誤を継続するモチベーションを保つことができたのは大きな収穫でした。

結論

私の先延ばし癖に対するデザイン思考を用いたアプローチは、完璧な解決をもたらしたわけではありませんが、課題の本質を理解し、具体的な改善策を計画し、小さく試して学びを得るという一連のプロセスを明確に進める上で非常に有効でした。

個人的な悩みや目標も、ビジネスにおける課題と同様に、デザイン思考のレンズを通して見ることで、これまでとは異なる角度からアプローチできる可能性があります。もしあなたも、長年抱えている個人的な課題や達成したい目標があるなら、ぜひ一度デザイン思考のプロセスを適用してみてはいかがでしょうか。まずは自分自身に深く「共感」することから、新たな発見があるかもしれません。