デザイン思考で朝活習慣化に挑んだ私の実践記録
デザイン思考で朝活習慣化に挑んだ私の実践記録
日々の生活の中で、「もう少し朝の時間を有効活用したい」「早起きして趣味や学習に時間を使いたい」と考える方は少なくないのではないでしょうか。私もその一人でした。これまで何度か朝活に挑戦しては挫折することを繰り返し、自分には早起きは向いていないのかもしれないと半ば諦めていました。しかし、仕事でデザイン思考に触れる機会が増える中で、「このアプローチは、もしかしたら自分の個人的な悩みや目標、例えば朝活の習慣化のような課題にも応用できるのではないか」と考えるようになりました。
デザイン思考は、複雑な問題を解決するためのユーザー中心のアプローチです。ビジネスにおける製品開発やサービス改善だけでなく、人間中心の視点から課題を捉え直し、創造的な解決策を生み出すフレームワークは、自分自身の内面的な課題や目標達成にも有効である可能性を秘めていると感じました。この記事では、私がデザイン思考のプロセスを個人的な目標である「朝活の習慣化」に適用し、どのように課題を深掘りし、アイデアを生み出し、試行錯誤を重ねたのか、その実践の記録を共有いたします。単なる成功談ではなく、うまくいかなかったことや、そこから得られた学びも率直に記述することで、読者の皆様がご自身の課題にデザイン思考を適用される際の参考にしていただければ幸いです。
課題の深掘り:朝活できない「本当の理由」を探る(共感・問題定義フェーズ)
デザイン思考の最初のステップは「共感(Empathize)」です。これは他者の視点を深く理解することですが、今回の課題は自分自身の内面に関わることでしたので、「自己への共感」、つまり自分自身の現状や感情、ニーズを徹底的に掘り下げることから始めました。
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なぜ朝活をしたいのか?
- 仕事前の静かな時間で集中して読書をしたい。
- 軽い運動を取り入れて健康を維持したい。
- メールチェックや簡単なタスクを済ませて、日中の仕事のスタートをスムーズにしたい。
- 「朝から何かを達成した」という小さな成功体験で一日をポジティブに始めたい。
- 夜はどうしてもダラダラしてしまう時間を有効活用したい。
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なぜ朝活が続かないのか?
- 目覚ましを止めて二度寝してしまう。
- 夜更かしをしてしまい、朝起きるのが物理的に辛い。
- 起きても何をするか具体的に決まっておらず、結局無為な時間を過ごしてしまう。
- 寒い・眠いといった生理的な辛さに耐えられない。
- 「やらなければならない」という義務感がストレスになる。
このような内省を通じて、単に「早起きが苦手」という表面的な問題ではなく、「夜の時間の使い方に問題がある」「朝起きた後の行動が不明確」「モチベーションの維持が難しい」といった、より根深い課題が見えてきました。
次に「問題定義(Define)」のフェーズです。共感のフェーズで得られた洞察をもとに、「解決すべき真の課題」を明確に定義します。私の場合は、「意志力に頼るだけでなく、夜の習慣と朝の行動を設計し、小さな成功を積み重ねることで、心身への負担を最小限に抑えつつ、持続可能な朝活習慣を確立すること」を課題として設定しました。「早く起きる」こと自体が目的ではなく、その先の「朝の時間を有効活用する」という目的のために、無理なく続けられる仕組みを作ることが重要だと再認識しました。
解決策の模索:多様なアイデアを出し、自分にフィットするものを選ぶ(アイデア創出フェーズ)
問題が定義できたら、次は「アイデア創出(Ideate)」のフェーズです。ここでは、定義した課題に対する可能な限りの解決策を、質より量を重視して発想します。今回は一人で行いましたが、頭の中でブレインストーミングを行うように、様々な角度からアイデアを書き出しました。
- 夜の習慣に関するアイデア:
- 就寝時間の固定、寝る1時間前からスマホを見ない、寝る前にストレッチをする、軽い音楽を聴く、寝る前に次の日の朝やることを書き出す。
- 朝の行動に関するアイデア:
- 目覚ましを遠くに置く、複数の目覚ましを使う、起きたらすぐにカーテンを開ける、顔を洗う、着替える、まず温かい飲み物を飲む、好きな音楽をかける、起きたらやりたいことを小さく始める(例:読書1ページだけ)。
- モチベーション維持に関するアイデア:
- 朝活仲間を見つける、朝活記録をつける、小さな目標達成ごとに自分にご褒美を与える、朝活で得られたメリットを定期的に見返す、なりたい自分をイメージする。
大量に出したアイデアの中から、私の課題定義「心身への負担を最小限に抑えつつ、持続可能な朝活習慣を確立すること」に合致するもの、そして自分にとって実現可能性が高いもの、ワクタイトに行う必要がないものを選定しました。例えば、「目覚ましを複数使う」は二度寝の物理的な抑止にはなりますが、根本的な解決にはならずストレスにもなり得ると判断し、見送りました。「朝活仲間を見つける」は魅力的ですが、すぐに実行するのは難しいため、後段階の選択肢としました。
最終的に、以下のアイデアを組み合わせることにしました。 1. 夜:寝る1時間前からスマホ断ち。寝る前に翌朝やることを「たった一つ」だけ具体的にリストアップ。 2. 朝:設定時刻になったらすぐにベッドから出て、リビングへ移動する。温かいコーヒーを淹れ、前夜リストアップした「たった一つのこと」をすぐに行う。 3. 全体:毎朝の行動を記録し、小さな変化に気づくようにする。
具体的な行動計画と試行:小さな一歩から始めて改善を繰り返す(プロトタイプ作成・テストフェーズ)
選定したアイデアを実行可能な「プロトタイプ(Prototype)」として具体化し、実際に試してみる「テスト(Test)」のフェーズです。デザイン思考では、完璧な計画を立てるよりも、まずは小さく始めて、フィードバックを得ながら改善していくことを重視します。
私の最初のプロトタイプは非常にシンプルでした。 * 期間:1週間 * 目標起床時間:いつもより15分早い時間 * 夜の習慣:寝る30分前にスマホを充電器につなぎ、寝室に持ち込まない。翌朝やることを「読書10ページ」と具体的に書き出す。 * 朝の行動:設定時刻になったらすぐにベッドを出て、リビングへ移動。コーヒーを淹れて読書を始める。
このプロトタイプを1週間試してみました。結果は以下の通りです。
- 1日目: なんとか起床。リストアップした読書もできた。達成感。
- 2日目: 起床はできたが、コーヒーを淹れる間に気が緩み、読書まで辿り着けず。
- 3日目: 夜のスマホ断ちが守れず、寝るのが遅くなり、朝起きられなかった。
- 4日目: リトライ。夜のスマホ断ち成功、朝も計画通り。
- 5日目: 起床後、やることが明確だったためベッドから出やすかったが、読書より別のことをしてしまった。
- 6日目・7日目: 週末で気が緩み、目標時間には起きられなかった。
この最初のテストから多くの学びがありました。 * 「たった一つのこと」を決めておくのは有効である。 * 夜の過ごし方が朝に大きく影響する。特にスマホは要注意。 * 「読書10ページ」は意外とハードルが高いかもしれない。 * 完璧を目指すとかえってプレッシャーになる。
これらの学びを踏まえ、プロトタイプを改善しました。目標起床時間をさらに5分早くし、夜のスマホ断ち時間を1時間に延長。朝やることは「読書1ページ」または「軽いストレッチ5分」など、さらにハードルを下げ、日によって選択肢を持たせるようにしました。また、週末は少し目標を緩めることも許容することにしました。
このように、小さな試行錯誤を繰り返し、行動計画を自身のリアルな状況や感情に合わせて柔軟に修正していくプロセスこそが、デザイン思考を個人的課題に適用する上での鍵だと感じました。一度失敗してもそこで諦めるのではなく、「なぜうまくいかなかったのか」を分析し、改善策を考えて再度試す、この反復が非常に重要でした。
結果と学び:プロセスそのものから得られる価値(結果と学び)
デザイン思考を適用した朝活習慣化への取り組みを数週間続けた結果、劇的な変化とまではいきませんでしたが、着実に前に進んでいる実感を得られました。以前のように「早起きしなければ」という義務感に押しつぶされることは減り、「今日は何を試してみようか」という少し前向きな気持ちで朝を迎えられる日が増えました。完全に毎日目標時間に起きられるようになったわけではありませんが、二度寝の回数は減少し、起きた後の行動も以前よりスムーズになりました。
このプロセスを通じて得られた最も大きな学びは、目標達成そのものと同じくらい、あるいはそれ以上に、プロセスそのものに価値があるということです。デザイン思考のフレームワークを通して、自分自身の行動パターンや感情、真のニーズについて深く内省する機会が得られました。失敗を単なる挫折としてではなく、次の改善に向けた貴重なデータとして捉える視点を身につけることができました。
また、プロトタイプ作成とテストを繰り返すアプローチは、完璧主義に陥りがちな私にとって非常に有効でした。最初から理想を追求するのではなく、まずは小さな一歩を踏み出し、その結果を見て柔軟に軌道修正していくことの重要性を実感しました。これは、仕事における新しい企画やプロジェクトの推進にも通じる考え方であり、個人的な課題への応用を通じて、デザイン思考の本質への理解がさらに深まったように感じています。
結論:あなたの課題にもデザイン思考を
私の朝活習慣化への挑戦はまだ道半ばですが、デザイン思考というレンズを通して自身の課題を見つめ、解決に向けて具体的な行動を重ねるプロセスは、非常に有益なものでした。ビジネスの文脈で語られることの多いデザイン思考ですが、このように個人的な悩みや目標、習慣改善といった身近な課題にも、その考え方やフレームワークは十分に適用可能です。
もしあなたが何か個人的な課題や達成したい目標をお持ちであれば、ぜひ一度デザイン思考のアプローチを試してみてはいかがでしょうか。まずは「なぜそれが課題なのか、なぜそれを達成したいのか」を深く掘り下げてみてください。そして、完璧ではない「プロトタイプ」として、小さな一歩を踏み出してみてください。失敗を恐れず、そこから学び、改善を続けていくことが、きっとあなた自身の「マイデザイン思考」の旅の素晴らしいスタートになるはずです。
この記録が、あなたの次なる一歩へのヒントとなれば幸いです。