仕事で活かせるスキルをデザイン思考で探求し、身につけるまでの道のり
仕事で活かせるスキル習得にデザイン思考を適用した背景
企画職として日々の業務に取り組む中で、データ分析や最新技術に関する知識の必要性を強く感じる機会が増えてきました。今後のキャリアを考えた際、これらの新しいスキルを習得することが避けては通れない課題であると認識していました。しかし、「何を、どのように、どこまで」学べば良いのかが漠然としており、具体的な一歩を踏み出せずにいました。
このような個人的な「悩み」や「目標」に対し、日頃仕事で触れているデザイン思考のフレームワークが有効ではないかと考えるようになりました。デザイン思考は、ユーザーの深い理解から始まり、問題定義、アイデア創出、プロトタイプ作成、テストという反復的なプロセスを通じて、革新的な解決策を生み出す手法です。これを自分自身の課題に適用することで、漠然とした「スキル習得」という目標を、より構造的で実行可能な計画に落とし込めるのではないか。そして、その過程で生まれるであろう様々な障壁にも、柔軟に対応できるようになるのではないか。そのような期待を抱き、今回の挑戦を開始しました。
課題の深掘り:なぜ、そして何を学ぶのか(共感・問題定義)
まず着手したのは、自分自身の「共感」と「問題定義」のフェーズです。誰かの課題ではなく、自分自身の内側、そして自分が置かれている状況を深く理解することから始めました。
自身の内省: * なぜ今、このスキルが必要なのか?(キャリアの停滞感、新しい企画への貢献、市場価値の向上など) * 具体的にどのような業務で、どのようにスキルを活用したいのか?(データに基づいた意思決定、業務効率化、顧客行動の分析など) * 現在の自分の知識やスキルレベルはどの程度か?(自己評価、過去の経験の棚卸し) * 学習にあたって懸念されることは何か?(時間の確保、モチベーション維持、費用、挫折経験など)
これらの問いに対し、日記をつけたり、マインドマップを作成したりして思考を整理しました。次に、自分を取り巻く環境、つまり「ユーザー」にあたる存在、具体的には上司や同僚、その分野のスキルを持つ友人との対話を行いました。
関係者との対話: * 現場で求められるデータ分析のレベルや具体的な活用事例は? * スキル習得のためにどのような学習が効果的か? * 学習においてどのような点につまずきやすいか? * 仕事との両立のコツは?
こうした内省と対話を通じて、単に「データ分析ができるようになる」ではなく、「営業データを分析し、顧客セグメントごとの効果的なアプローチ方法を提案できるようになる」といった、より具体的で自分の業務に直結する「ユーザー(=未来の自分)のニーズ」を明確に定義することができました。この段階で、抽象的な目標が、解決すべき具体的な「問題定義」へと昇華されました。例えば、「限られた時間の中で、実践的なスキルを習得し、実際の業務で活用できるレベルに達するためには、どのような学習経路が最も効率的か」といった問題です。
解決策の模索:様々なアプローチを考える(アイデア創出)
問題が明確になったところで、次は解決策となる「アイデア創出」に移ります。このフェーズでは、可能な限り多様な学習方法やアプローチを考え出しました。
- オンライン学習プラットフォーム(Coursera, Udemy, schooなど)の特定コースを受講する
- 関連書籍を体系的に読み進める
- プログラミングスクールやセミナーに通う
- 社内外の勉強会やコミュニティに参加する
- メンターを見つけ、アドバイスをもらう
- 実際の業務データ(可能な範囲で)を使って実践的に学ぶ
- 資格取得を目指し、体系的な学習を強制する
ブレインストーミングのように、まずは質より量を重視してアイデアをリストアップしました。次に、これらのアイデアを「実現可能性」「自身の学習スタイルとの適合性」「目標達成への効率性」「費用対効果」といった観点から評価し、絞り込みを行いました。例えば、フルタイムで働く中で、特定の時間に拘束されるスクールは難しい。一方で、一人での学習はモチベーション維持が課題になりそう。結果として、「オンライン学習プラットフォームの活用」を軸に、「関連書籍での補強」と「可能であれば社内コミュニティへの参加」を組み合わせるというアイデアに絞られました。これは、自身の時間の制約や、実践的な内容へのアクセス、他者との交流によるモチベーション維持を考慮した結果です。
具体的な行動計画と試行:小さな一歩を踏み出し、修正する(プロトタイプ・テスト)
絞り込んだアイデアを実行可能な「プロトタイプ」に落とし込み、実際に「テスト」を開始しました。私のプロトタイプは、具体的な学習計画です。
- 使用するオンラインコースと書籍を選定
- 週ごとの学習時間と内容を設定(例:平日夜1時間、週末2時間)
- 中間目標を設定(例:1ヶ月後までに基礎構文を習得、3ヶ月後までに簡単なデータ分析ができるようになる)
- 学習進捗を記録する方法を決める(学習ログ、ToDoリスト)
この計画に従い、学習を開始しました。これが「テスト」の始まりです。最初の1ヶ月は計画通りに進みましたが、2ヶ月目に入ると業務の繁忙や体調不良で計画が遅れがちになりました。ここでデザイン思考の反復性が活きてきます。計画通りに進まないことは「失敗」ではなく、プロトタイプの改善点を発見するための「テスト結果」です。
- 予期せぬ結果: 設定した学習時間では内容消化が追いつかない。休日も疲れて集中できない。
- 対処法(再プロトタイプ): 計画を見直し、平日の学習時間を30分に短縮し、週末にまとめて行う時間を作る。集中できない時は無理せず休憩を取り、学習内容を細かく分割する。学習ログを見える化し、進捗の遅れを早期に察知できるようにする。
このように、計画(プロトタイプ)を実行し、その結果(テスト)から課題を見つけ、計画を修正する(再プロトタイプ)というサイクルを繰り返しました。完璧な計画を一度で作ろうとするのではなく、動きながら改善していくアプローチが有効でした。また、学習内容が難解で理解が進まない時は、関連コミュニティで質問してみたり、別の解説記事を探してみたりと、当初の計画に含まれていなかった行動も柔軟に取り入れました。
結果と学び:道のりの途中で得られたこと
デザイン思考のプロセスを経て、新しいスキル習得への取り組みは現在も継続中です。設定した中間目標に対し、完全に予定通りとはいかないものの、着実に前進している実感があります。特に、当初は漠然としていた学習内容が明確になり、自分が何を知っていて、何を知らないのかが具体的に把握できるようになったことは大きな変化です。
この実践を通じて得られた学びは多岐にわたります。
- 共感・問題定義の重要性: 表面的な「スキル習得」という目標の裏にある、自身の真のニーズや課題を深掘りすることで、学習の目的が明確になり、モチベーション維持につながりました。
- 小さなプロトタイプとテスト: 最初から完璧を目指すのではなく、実行可能な小さな計画を立て、すぐにテストを開始し、フィードバックを得ながら改善していくアプローチが、継続には不可欠であると実感しました。計画通りに進まないことこそが、改善のための貴重な情報源であるという認識が重要です。
- 反復プロセスの有効性: 学習中に直面する様々な障壁に対し、立ち止まるのではなく、原因を探り、異なるアプローチを試すというデザイン思考の反復プロセスが、柔軟な対応を可能にしました。
- 個人的課題への適用性: 仕事の課題解決だけでなく、個人的な目標達成においても、デザイン思考の各フェーズが有効なフレームワークとして機能することを体験的に理解しました。自身の内省や関係者との対話が「共感」、目標の具体化が「問題定義」、様々な学習方法の検討が「アイデア創出」、学習計画と実行が「プロトタイプとテスト」として自然に適用できることを発見しました。
結論:個人的な課題解決へのデザイン思考の価値
今回の新しいスキル習得への挑戦は、デザイン思考を個人的な課題解決に適用した実践例として、多くの気づきをもたらしてくれました。漠然とした目標に対し、共感、問題定義、アイデア創出、プロトタイプ、テストという構造的なアプローチを用いることで、実行可能な計画を立て、途中の困難にも柔軟に対応しながら、着実に前に進むことができています。
これは単なるスキル習得に限らず、キャリアパスの見直し、新しい趣味の開始、健康習慣の確立など、様々な個人的な目標や悩みに応用できる考え方だと感じています。もしあなたが今、何か漠然とした課題を抱え、どこから手をつけて良いか分からないと感じているのであれば、一度立ち止まり、自分自身や関係者に「共感」し、解決すべき「問題」を定義するところからデザイン思考を始めてみるのはいかがでしょうか。完璧な答えを探すのではなく、小さな「プロトタイプ」を作り、試行錯誤の「テスト」を繰り返すその道のり自体が、きっと新たな学びと前進につながるはずです。