マイデザイン思考ノート

「副業を始めたい」をデザイン思考で実現するプロセスと記録

Tags: デザイン思考, 副業, キャリア, 目標達成, 実践記録

漠然とした「副業を始めたい」という思いからデザイン思考へ

多くの方がそうであるように、私自身もキャリアの選択肢を広げたい、あるいは自身のスキルを別の形で活かしたいという漠然とした思いから、「副業を始めてみたい」と考える時期がありました。しかし、日々の業務に追われる中で具体的に何をすれば良いのか、自分には何ができるのかが定まらず、ただ時間だけが過ぎていく状況でした。

このような個人的な課題に対して、仕事で馴染みのあるデザイン思考のアプローチを適用してみることにしました。デザイン思考は、複雑な問題の本質を見つけ、ユーザー中心のアプローチで革新的な解決策を生み出すためのフレームワークです。これを自分自身の「副業を始めたい」という課題解決に置き換えてみようと考えたのです。自身の悩みや目標をユーザーと見立て、そのニーズや課題を深く理解することから始めるアプローチは、個人的な目標設定においても有効ではないかという仮説を持ちました。

課題の深掘り:本当に「副業」で解決したいことは何か?

デザイン思考の最初のステップである共感(Empathize)と問題定義(Define)を、自己分析と捉え直しました。「なぜ副業をしたいのか?」という問いに対し、単に収入を増やしたいという理由だけでなく、自身の内面と深く向き合いました。

具体的には、まずジャーニーマップを応用し、「副業をしたい」と考え始めてから現在までの自身の感情や行動の変化、そこに潜む欲求や不満を可視化してみました。時間がないことへの焦り、自分の市場価値への不安、新しい挑戦への期待などが浮き彫りになりました。

次に、信頼できる友人や家族に「私がどんなことに興味を持っていると思うか」「どんなスキルがあると思うか」を率直に尋ねるという、「関係者への共感」に近い手法を取り入れました。自分では気づかなかった強みや、逆に認識していた得意なことが他人からはそう見えていない、といった発見がありました。

これらの内省と他者からのフィードバックを経て、「本当に解決したい課題」を再定義しました。単に収入を増やすことではなく、「自身の専門性とは異なる領域で、新たなスキルを習得し、自己成長を実感できる機会を得ることで、将来の不確実性に対応できる自信をつける」ことこそが、自分が副業に求めている本質であると明確になりました。この定義が、その後のアイデア出しの指針となりました。

解決策の模索:アイデア出しと絞り込み

問題定義が明確になった後、アイデア創出(Ideate)のフェーズに移りました。先ほど定義した「新たなスキル習得と自己成長」という目的に合致する副業のアイデアを、質より量を重視して自由に発想しました。ブレインストーミングの手法を一人で、あるいは前述の友人と一緒に実施しました。

リストアップされたアイデアには、ライティング、プログラミング学習、デザイン、オンライン講師、写真販売、クラウドファンディングへの参加など、多様なものが含まれていました。これらのアイデアを、以下のいくつかの基準で評価し、絞り込みを行いました。

この評価プロセスを経て、最終的に「スキルを活かしたライティング」と「趣味の分野に関する情報発信(ブログ・SNS)」の二つのアイデアに絞り込みました。どちらも、自己成長の余地があり、比較的低コストで始められ、自身の既存スキルや興味を活かせる点が高評価でした。

具体的な行動計画と試行:小さく始めてみる

アイデアを絞り込んだら、プロトタイプ作成(Prototype)とテスト(Test)のフェーズです。副業という性質上、大規模な準備や投資はリスクが大きいため、最小限の労力で試せる「ミニマム・バイアブル・プロダクト(MVP)」のようなアプローチを取りました。

「ライティング」については、まずクラウドソーシングサイトに登録し、初心者向けの簡単な案件を一つだけ受けてみることにしました。これは「プロトタイプ」であり、実際に案件探し、提案、執筆、納品、報酬受け取りという一連の流れを「テスト」する機会と捉えました。

最初の案件では、予想以上に調査や推敲に時間がかかり、時間単価に換算すると非常に低い効率でした。また、クライアントへの確認や修正依頼の対応にも戸惑う場面がありました。しかし、一つの記事を書き上げ、納品し、承認されたときの達成感は、目的の一つであった「自己成長の実感」に繋がるものでした。これが最初の「テスト」の結果であり、貴重な学びでした。

「情報発信」については、まずはブログを立ち上げるのではなく、既存のSNSプラットフォームで趣味に関する情報発信を始めてみました。これはブログ構築よりも手軽で、投稿への反応を見ながらコンテンツの方向性やニーズを探るための「プロトタイプ兼テスト」です。短い投稿に対する反応やコメントから、どのような情報に関心が持たれやすいか、どのような形式が受け入れられやすいかといったインサイトを得ることができました。

これらの初期の試行(テスト)を通じて、自分に向いている作業内容や、必要なスキル、時間配分の現実的な感覚を掴むことができました。最初の計画通りには進まないことばかりでしたが、小さな失敗から学び、次の行動に繋げるというデザイン思考のイテレーションの考え方が非常に役立ちました。

結果と学び:継続と次のステップへ

初期の「プロトタイプとテスト」の結果、ライティングは予想以上に時間を要するものの、自身の論理構成力や文章力を磨く良い機会になると感じました。情報発信は、手軽に始められる反面、収益化や目標達成への道筋はまだ不明確であるということが分かりました。

この学びを踏まえ、現在はライティングを中心に副業活動を継続しています。初期のテストで見えた課題(時間効率、コミュニケーション)については、ツールの活用やテンプレートの整備といった改善策(次のプロトタイプに向けた準備)を進めています。情報発信についても、得られたインサイトをもとに、よりターゲットを絞った内容での投稿を試みるなど、継続的にテストを繰り返しています。

デザイン思考を自身の「副業を始めたい」という課題に適用したことで、単なるハウツーに頼るのではなく、自分自身の内面と向き合い、小さく試して学びを得るというプロセスを経ることができました。これにより、漠然とした不安が具体的な行動に変わり、仮説検証を繰り返しながら着実に前進できているという実感があります。

結論:個人的な課題解決におけるデザイン思考の価値

「副業を始めたい」という個人的な目標に対し、デザイン思考のフレームワークを適用した実践は、非常に有効であると感じています。共感・問題定義フェーズで自身の真の欲求を明確にし、アイデア創出フェーズで多様な可能性を探り、プロトタイプ・テストフェーズでリスクを抑えながら具体的な行動と学びを得る。この一連のプロセスは、ビジネスにおける製品開発と同様に、個人の人生における「新しい挑戦」にも適用できる普遍的な思考法であると言えるでしょう。

もちろん、個人的な課題においては、他者への共感よりも自己理解が中心となったり、プロトタイプも具体的なサービスや製品ではなく行動計画になったりと、ビジネスへの適用とは異なる翻訳が必要になります。しかし、曖昧な状況から一歩を踏み出し、試行錯誤を通じて目標に近づいていくための強力な羅針盤となり得ます。

もしあなたが今、何か新しいことを始めたいと考えているものの、何から手をつければ良いか分からない、あるいは一歩踏み出すのが怖いと感じているのであれば、ぜひ一度、デザイン思考のプロセスを自分自身に適用してみてはいかがでしょうか。きっと、あなたの内なる声に耳を傾け、具体的な行動へと繋がる道筋が見えてくるはずです。