マイデザイン思考ノート

デザイン思考で「継続的な内省習慣」をデザインし、実践した記録

Tags: デザイン思考, 内省, 習慣化, 自己成長, 実践記録

なぜ「継続的な内省習慣」が必要だと感じたのか

日々の業務に追われる中で、立ち止まって自身の思考や感情、行動を深く振り返る時間がほとんど持てていないことに気づきました。常に目の前のタスクをこなすことに終始し、長期的な視点や、本当に自分が何を求めているのかを見失いつつある感覚に陥っていました。これは、仕事における企画立案や問題解決においても、表面的な対応に留まり、本質的な課題に迫れていないことと無関係ではないと感じていました。

このような状況に対し、単なる「反省」で終わらせず、より体系的かつ建設的に自己理解を深め、行動変容に繋げるための「継続的な内省習慣」を身につけることが不可欠だと考えるようになりました。そこで、普段仕事で慣れ親しんでいるデザイン思考のアプローチを、この個人的な課題解決に適用してみることを試みました。

課題の深掘り:なぜ内省が続かないのか(共感・問題定義フェーズの実践)

まずは、なぜこれまでの私は内省を継続できなかったのか、その根本原因を探ることから始めました。これはデザイン思考でいう「共感」と「問題定義」のフェーズにあたります。

自身の過去の経験を振り返り、内省を試みては挫折したパターンを洗い出しました。 * 「時間がない」「忙しい」という理由で後回しになる。 * 「何をどう内省すれば良いのか分からない」という内省の「やり方」の不明確さ。 * 内省しても「何も変わらない」と感じてしまう、効果の実感のなさ。 * 特定のツールやフォーマットに縛られすぎ、継続が負担になる。

これらの内省から、私の「内省が続かない」という課題の根底には、「効果的で継続可能な、自分にフィットする内省の『やり方』を確立できていない」という問題があることが見えてきました。単に時間を確保するだけでなく、内省の質を高め、それを習慣化するための具体的な仕組みが必要だと定義しました。

この課題をさらに深掘りするため、親しい友人や家族に「最近、自分がどんなことに悩んでいるように見えるか」「私がもっと意識的に振り返った方が良いと思う点は何か」といった問いかけをしました。彼らの客観的な視点から、「一人で考え込みすぎる傾向がある」「頭の中だけで結論を出そうとしている」といったフィードバックを得ることができました。これにより、内省は単なる一人作業ではなく、外部との対話や記録といったアウトプットを伴うプロセスであるべきだという示唆を得ました。

解決策の模索:自分らしい内省の「形」を探す(アイデア創出フェーズの実践)

定義された課題「効果的で継続可能な、自分にフィットする内省の『やり方』を確立する」に対し、多様な解決策のアイデアを発想する「アイデア創出」フェーズに進みました。

書店で内省や習慣化に関する書籍を読んだり、オンラインで紹介されている様々な内省手法(ジャーナリング、モーニングページ、PDCAサイクル、KPT法、マインドマップなど)を調べたりしました。それらをリストアップし、「自分にとって継続しやすそうか」「内省の効果を感じられそうか」「現在のライフスタイルに取り入れやすいか」といった観点から評価しました。

このプロセスで、いくつかのアイデアが有効だと感じられました。 * 時間を決めすぎず、隙間時間を活用する。 * 手書き、PC、スマホアプリなど、形式にこだわらない。 * 内省のテーマを具体的にする(例: 今日の良かった点、改善したい行動、次に試したいこと)。 * 内省の結果を記録し、後で見返せるようにする。 * 定期的に信頼できる人と内省の内容を共有する場を持つ。

これらのアイデアを組み合わせ、「毎日寝る前に5分、その日の良かったことと改善点をノートに手書きで記録する」「週に一度、週末に30分程度、一週間の振り返りと翌週の目標をPCでまとめる」「月に一度、友人とカフェでカジュアルに近況と内省テーマについて話し合う」という、複数のアプローチを組み合わせたプロトタイプを構築することにしました。これは、一つの方法に固執せず、多様なアプローチの中から自分に合うものを見つけ出すための試みです。

具体的な行動計画と試行(プロトタイプ作成・テストフェーズの実践)

アイデアを具体的な行動計画に落とし込み、まずは2週間試行してみることにしました。これはデザイン思考の「プロトタイプ作成」と「テスト」のフェーズです。

プロトタイプ1:毎晩5分の手書きジャーナル * 実践内容: 寝る前に日記帳を開き、「今日感謝していること」「今日うまくいったこと」「今日改善したいこと」の3点について、深く考えず思いつくままに手書きで書き出す。 * 結果: 最初の数日は新鮮で続けられましたが、疲れている日はペンを持つのが億劫になり、スキップしてしまうことがありました。また、テーマが固定的すぎると感じ、形式的な作業になりがちな側面も見られました。

プロトタイプ2:週末のPCでの振り返り * 実践内容: 土曜日の午前中に時間を確保し、PCで一週間の行動と思考を振り返り、テキストファイルに記録する。「今週のハイライト」「課題」「来週試したいこと」といった項目を設定。 * 結果: 手書きよりも多くの量を記録でき、思考の整理には役立ちました。しかし、週末の予定に左右されやすく、これも継続が難しい場合がありました。また、PCに向かうと他の作業に気が散ることもありました。

プロトタイプ3:月一度の対話 * 実践内容: 友人と約束し、互いの近況や考えていることについて話す時間を設ける。事前に話したいテーマを一つ決めておく。 * 結果: これは最も効果を実感できたアプローチでした。他者に話すことで思考が整理され、自分一人では気づけなかった視点を得られました。定期的に人と会う約束をすることが、内省の機会を強制的に作るトリガーとしても機能しました。

これらの試行を通じて、それぞれのプロトタイプに一長一短があることが分かりました。手書きは内面と向き合いやすいが継続性が課題、PCは整理しやすいが気が散りやすい、対話は効果が高いが頻繁には難しい、といった具体的な学びが得られました。

結果と学び:自分にフィットする内省習慣への道筋

2週間の試行の結果、完全に計画通りに全てのプロトタイプを実践できたわけではありませんでしたが、内省に対するハードルが下がり、自分にとってどのような形式や頻度であれば継続できそうか、具体的な感触を得ることができました。

最も重要な学びは、「完璧な一つの方法」を追求するのではなく、複数のアプローチを組み合わせ、状況に応じて柔軟に使い分けることの重要性でした。また、内省は義務ではなく、自身の成長やwell-beingのための「機会」として捉えること、そしてそのプロセスを「楽しむ」工夫が必要だと気づきました。

デザイン思考のプロセスを適用したことで、単なる「内省しよう」という漠然とした目標から、「内省が続かない根本原因は何だろう」「どんな内省の形が自分に合っていそうか」「まずはこれを試してみよう、そしてどうだったかを記録しよう」という具体的なステップで課題に取り組むことができました。うまくいかなかったプロトタイプからも学びを得て、次の行動に繋げることができたのは、テストと改善のサイクルを回せたからです。

一方で、個人的な課題に対するデザイン思考の適用には、ビジネス上の課題とは異なる難しさもありました。特に「共感」の対象が自分自身や身近な人に限られる点、そして「テスト」の結果が定量的に測りにくい点です。しかし、これらの点は、より深く自己と向き合い、率直なフィードバックを得るための工夫(例: 第三者との対話)によって補うことができると感じました。

結論:個人的な課題解決におけるデザイン思考の価値

この「継続的な内省習慣の定着」という個人的な課題に対するデザイン思考のアプローチは、完璧な習慣の確立には至っていませんが、課題の本質を捉え、多様な解決策を試し、その結果から学びを得て次に繋げるという、具体的な道筋を示してくれました。

デザイン思考は、ビジネスにおける製品開発やサービス設計だけでなく、私たち一人ひとりのキャリアや生活、習慣といった個人的な課題に対しても、非常に有効なフレームワークとなり得ます。漠然とした悩みや目標に対し、共感・問題定義・アイデア創出・プロトタイプ・テストというプロセスを適用することで、実行可能なアクションに落とし込み、試行錯誤を通じて自分にとって最適な解決策を見つけ出す可能性を高めます。

もし、あなた自身も何か個人的な課題や目標に対し、どのように取り組めば良いか迷っているのであれば、一度デザイン思考の視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。まずは「なぜその課題があるのか、その背景には何があるのか」という共感・問題定義のフェーズから始めてみることをお勧めします。それは、解決への確かな第一歩となるはずです。