ブログ運営の習慣化と質向上をデザイン思考で探求し、実践した記録
個人的な課題にデザイン思考を適用する試み:ブログ運営の習慣化
日々の仕事や生活の中で、私たちは様々な悩みや目標に直面します。それらの多くは明確な正解がなく、試行錯誤を繰り返しながら自分なりの解を見つけていく必要があります。私は以前から、自身の学びや考えを整理し、外部へ発信する手段としてブログ運営に関心がありました。しかし、「ブログを始めたい」あるいは「継続的に質の高い記事を書きたい」という漠然とした思いはあっても、なかなか行動に移せず、習慣化することも、求める質に達することも難しい状況が続いていました。
この個人的な課題に対し、私はビジネスにおける課題解決や新規事業創出で用いられるデザイン思考のアプローチを適用してみようと考えました。デザイン思考は、ユーザーへの共感を出発点とし、問題定義、アイデア創出、プロトタイプ作成、テストというプロセスを繰り返しながら、人間中心の解決策を探求する手法です。これを自身の内面や個人的な目標に応用することで、従来の根性論や一般的なハウツーに頼るのではなく、より体系的に、そして自分自身の状況にフィットする形で課題を解決できるのではないかという期待がありました。
課題の本質を探る:共感と問題定義フェーズの実践
ブログ運営が習慣化しない、質が向上しないという課題に対し、まずはその根本原因を探ることから始めました。これはデザイン思考における「共感」と「問題定義」のフェーズに相当します。
自身の内面を深く掘り下げるために、私は「なぜブログを書きたいのか」「なぜ書けないのか」といった問いを繰り返し自問しました。書きたい気持ちの背景には、自身の知識を体系化したい、誰かの役に立ちたい、自身の専門性を高めたいといった動機がある一方で、書けない理由としては、まとまった時間がない、何を書けば良いかわからない、完璧な文章でなければ公開できないというプレッシャー、書くことそのものが億劫である、誰にも読まれないかもしれないという不安などが浮かび上がってきました。
次に、仮想の読者や、既にブログを継続している知人(実際には彼らのブログや発信内容を参考にしました)といった「関係者」の視点を取り入れてみました。ブログ読者はどのような情報に価値を感じるのか、他のブロガーはどのような課題を抱え、どのように乗り越えているのか。これにより、自身のブログがどのような読者に向けて、どのような価値を提供するのかが曖昧であること、そして執筆プロセス自体に、私自身が気づいていない非効率な部分や心理的なブロックがある可能性が見えてきました。
これらの内省と外部からの示唆を踏まえ、ブログ運営の習慣化と質向上という課題の本質は、単なる「時間がない」ことではなく、「執筆・更新プロセスにおける心理的・実務的なハードルを下げ、ターゲット読者と提供価値を明確にする」ことにあると再定義しました。これは、デザイン思考でいう「ユーザーニーズの深い理解(共感)」から「解決すべき真の課題の特定(問題定義)」へと進むプロセスを、自分自身とブログの関係性に適用したものです。自己分析のために、簡易的なパーソナルペルソナ(理想の読者像)や、ブログ執筆ジャーニーマップ(アイデア出しから公開までの自身の感情と行動の可視化)を作成したことも、課題の解像度を高める上で役立ちました。
解決策のアイデアを広げる:アイデア創出フェーズの実践
明確になった課題に対し、次に様々な解決策のアイデアを出すフェーズです。ここでは、「どうすれば執筆のハードルを下げられるか」「どうすればネタを継続的に見つけられるか」「どうすれば継続できる仕組みを作れるか」といった問いに基づき、ブレインストーミングを行いました。一人で行うブレインストーミングでは、思考を制限せず、思いつく限りのアイデアを書き出しました。
出てきたアイデアには、毎日決まった時間に少しだけ書く、通勤時間や隙間時間を活用する、完璧主義を手放す、ネタ帳を作る、他者の質問からヒントを得る、ブログ仲間を作る、執筆ツールを工夫するなど、様々な方向性のものがありました。中には、全く現実的でないと思われるアイデアも含まれていましたが、まずは量を重視しました。
その後、それらのアイデアを「実現可能性」「自身の生活スタイルへのフィット感」「課題解決への効果の高さ」といった基準で評価し、絞り込みを行いました。例えば、「毎日2時間執筆時間を確保する」というアイデアは効果は高いかもしれませんが、現実的なフィット感に欠けます。一方、「毎日15分だけPCを開いてブログのことだけを考える」というアイデアは、ハードルが低く継続しやすそうだと判断しました。
このフェーズを通じて、単に「頑張って書く」以外の、多様なアプローチが存在することを認識できました。また、複数のアイデアを組み合わせたり、自分なりにアレンジしたりすることで、より実行可能な解決策が見えてきました。
小さく試して改善する:プロトタイプとテストフェーズの実践
絞り込んだアイデアを具体的な行動計画(プロトタイプ)に落とし込み、実際に試してみるフェーズです。デザイン思考では、完璧なものを作るのではなく、素早く形にしてフィードバックを得ることを重視します。
最初のプロトタイプとして、「毎日朝食後、ブログ執筆のためにPCを開き、15分だけ書く」という行動を試みました。1週間継続してみた結果、PCを開く習慣はついたものの、ネタがない、あるいは15分では何も書けないという壁に直面しました。これは、単に時間を作るだけでは不十分で、執筆前の段階(ネタ出しや構成)に課題があることを示唆していました。
このテスト結果を踏まえ、プロトタイプを修正しました。次のプロトタイプは、「朝の15分はネタ出しか構成作りに特化し、執筆自体は週末など集中できる時間に行う」「ネタ出しには特定のテンプレート(例:読者の悩み→その解決策→具体的な方法、の3ステップ)を活用する」というものです。このプロトタイプを2週間試したところ、朝の時間を活用してネタや構成はある程度準備できるようになりました。しかし、週末にまとまった時間を確保するのが依然として難しく、テンプレートも毎回使うのは窮屈に感じられました。
さらにテスト結果から学び、プロトタイプを再構築しました。今度は、「ネタ出しや構成は、移動中などの隙間時間にスマートフォンでメモする」「執筆はPCに向かう時間を固定せず、集中できるカフェなどを活用する」「具体的な読者像(ペルソナ)を一人に絞り、その人に語りかけるように書く」というアプローチを試みました。このプロトタイプを1ヶ月継続したところ、隙間時間の活用で常にいくつかのネタや構成の断片が手元にある状態になり、いざ書こうと思ったときにすぐに取り掛かれるようになりました。また、場所を変えることで気分転換になり、短時間でも集中して執筆を進められる感覚を得ました。特定の読者を意識することで、文章の焦点が定まりやすくなり、伝えたいことがブレにくくなったことも大きな発見でした。
実践からの学びと考察:結果と学びフェーズの実践
一連のプロトタイプとテストを通じて、完璧な「ブログ習慣化計画」は完成しなかったものの、以前に比べてブログ執筆へのハードルは確実に下がりました。結果として、目標としていた週1回更新には達しませんでしたが、以前は数ヶ月に1回だった更新頻度が、月2〜3回程度に向上しました。また、特定の読者を意識するようになったことで、記事の内容や構成も以前より明確になり、読者からの反応も具体的なものが増えたように感じています。
この実践を通じて得られた最も重要な学びは、個人的な課題においても、原因を深く掘り下げ、多様な解決策を検討し、そして何よりも「小さく試して、そこから学ぶ」というサイクルが非常に有効であるということです。特に、最初から「書く」という大きな塊に取り組むのではなく、「ネタ出しだけ」「構成だけ」といった小さなプロトタイプに分解し、無理なく実行できる形を探っていったことが、継続への第一歩となりました。また、自分自身の内面を「ユーザー」として捉え、そのニーズや行動、感情を客観的に観察するというデザイン思考の視点が、課題解決の糸口を見つける上で役立ちました。
一方で、ブログ運営の習慣化という課題は、自身のモチベーションや外部環境の変化にも影響されるため、デザイン思考のフレームワークだけで全てが解決するわけではないという限界も感じています。しかし、デザイン思考は、なぜ継続できないのかという「問い」に対し、具体的な「打ち手」を生み出し、それを改善していくためのプロセスを提供してくれました。
結論:個人的な課題解決におけるデザイン思考の可能性
ブログ運営の習慣化と質向上という、私自身の個人的な課題に対するデザイン思考の適用は、多くの示唆を与えてくれました。単なる漠然とした悩みや目標も、デザイン思考のプロセスを通じて分解し、具体的な解決策を考え、実行可能な小さなステップに落とし込むことで、着実に前進できることを実感しました。
特に、共感フェーズでの深い内省と問題定義、アイデア創出フェーズでの自由な発想、そしてプロトタイプとテストフェーズでの継続的な試行錯誤は、個人的な課題解決においても非常に有効なアプローチであると言えます。うまくいかなかった試みからも学びを得て、次の行動に繋げられる点は、デザイン思考の大きな利点だと感じました。
もしあなたが、キャリアや趣味、人間関係、自己成長など、個人的な悩みや目標に対して一歩踏み出したいと考えているのであれば、デザイン思考のフレームワークを応用してみる価値はあるかもしれません。まずは、ご自身の状況を深く理解することから始め、小さな行動をデザインし、試してみてはいかがでしょうか。そのプロセス自体が、きっとあなたにとって新しい発見と学びをもたらしてくれるはずです。